ダウンタウンチャンネル(仮)はうまくいくのかWEBマーケターが考えてみた
サムネイル画像は独占インタビュー記事より(撮影・羽田誠)
昨年12月25日にダウンタウン松本人志さんの独占インタービュー「松本人志が語る今の思い。そして見据える今後」が発表されました。
インタビューの中で気になったのが、「ダウンタウンチャンネル(仮)」の部分です。
そこで出てきたのが「ダウンタウンチャンネル(仮)」。これはね、前々から構想はあって周りで言ってくれる人もいたんです。ただ、僕の腰が重くてなかなか動いてこなかったんですけど「『ダウンタウン』を見るならここ」という独自の基地局を作る。月にいくらか払っていただいて、プラットフォームも独自に作って、見たい人に見てもらいたいものを直接届ける。すごく間口の広い劇場というか、好きなもん同士が集まって、好きなことをやる。そんな場になるだろうと考えています。
すでに実際に会議もしていますし、来春あたりにスタートしたい。週に何本か見てもらえる番組も作りたいと思っていますし
ダウンタウンチャンネル(仮)のポイントは次の3つです。
- 独自のプラットフォームを作る
- 月額料金制
- 週に何本か番組を配信
それぞれのポイントの解説をしていきながら、WEBマーケターの視点でダウンタウンチャンネル(仮)がうまくいくのかどうか考察していきます。
独自のプラットフォームは作れるのか?
一番衝撃的だったのは「独自のプラットフォームを作る」という点で、新規でプラットフォームを立ち上げるのは多大な労力が必要になるので、通常ならYouTubeやABEMA、アマゾンプライム、ニコニコ動画など既存のプラットフォームを利用しますが、多大な労力をかけてでも独自のプラットフォームを作るということに驚きました。
月額料金制にすることと合わせて、「なぜ独自のプラットフォームを作るのか?」についての考察は後述します。
独自プラットフォームを構築するのに莫大な費用が掛かってしまったり、技術的に難しいと実現が難しくなりますので、まずは独自のプラットフォームを作ることは可能なのかについて考察していきます。
独自プラットフォームを作る上で障害になること
動画配信のプラットフォームをどうやったら作れるか考えたことがなかったので、どうすれば構築できるか考えてみたところ、真っ先に思い浮かんだ問題点は「動画の配信」と「大量のアクセス」です。
ホームページは作れる会社がたくさんありますし、ダウンタウンのファンの方が見るので、多少ユーザビリティが悪くても特に大きな問題にならないかと思います。
WEB上で入退会の手続きができて、クレジットカード決済もできるようにするシステムも、この仕組み自体は様々なサービスでやっていますので、このシステムを構築できる会社があるはずなので、ここも問題にはならないかと思います。
問題になってくるのは、動画を配信するということと、大量のアクセスがあるという点で、動画はデータが重いので、普通のホームページを見るのと比べて、多くのデータ転送量が必要になります。
しかも人気のあるダウンタウンで、さらに松本人志さんの復帰なので、大量のアクセスがあって、視聴回数も多くなることが予想されます。
そのため、「データが重い動画をたくさんの人が視聴できるようにする」というシステムの構築が鍵になってきます。
サーバーは、ABEMAがAWS(Amazon Web Services)を使っているので、AWSを使えば克服できそうですが、日本で大規模な動画配信サービスをしているのはABEMAとニコニコ動画くらいで、おそらく社内の人間でシステムを構築してると思うので、それくらいの規模の動画配信サービスを構築できる会社を見つけることができるかが問題になってくるかと思います。
動画配信サービスのビジネスモデルは3つ
月額料金制の話に入る前に、動画配信サービスのビジネスモデルについて説明します。
動画配信サービスでも、YouTubeは無料でNetflixは有料です。
この違いはなにかというと、ビジネスモデルの違いです。
動画配信サービスのビジネスモデルは大きく分けて、広告収入、サブスクリプション、コンテンツ販売の3つがあります。
広告収入
企業の広告を出すことで収益になります。
YouTubeがこのビジネスモデルで、そのため広告収入のビジネスモデルの動画配信サービスでは広告が表示されます。
企業から広告を出してもらわないと収益にならないので、企業にとって魅力的なサービスであることが重要になります。
サブスクリプション
料金を支払うことで一定期間サービスを利用できるというサービスで、サービス利用者が支払う利用料が収益になります。
Netflixがこのビジネスモデルで、今回のダウンタウンチャンネル(仮)も「月にいくらか払ってもらって」と書いているので、このサブスクリプションになると思われます。
YouTubeの有料プラン「YouTube Premium」やABEMAの有料プランもサブスクリプションのビジネスモデルで、YouTubeとABEMAは広告収入とサブスクリプションの両方を取り入れてるビジネスモデルになります。
新規入会・継続してもらわないと収益にならないので、利用者にとって料金に見合う魅力的なサービスであることが重要になります。
コンテンツ販売
電子書籍と同じように動画毎に購入する仕組みで、動画の販売代金が収益になります。
大泉洋さんの「水曜どうでしょう」などを制作しているHTB北海道テレビがこのビジネスモデルで、番組毎の販売を行っています。
サブスクリプションとコンテンツ販売の違い
料金が掛かるのはサブスクリプションと同じですが、コンテンツ販売は一度購入するとそれ以降は料金が掛からないのに対して、サブスクリプションは一定期間サービスを利用できる権利を購入する形なので、サービスを利用し続ける限り料金が発生するという違いがあります。
また、コンテンツ販売は動画単体の魅力で購入してもらえるのに対して、サブスクリプションはサービス全体で魅力的な動画があれば利用を継続してもらえるという違いがあります。
ビジネスモデルによってWEB戦略は異なる
ちなみに、X(旧twitter)で下記のような投稿をしたのは、どのようなビジネスモデルがあって、ビジネスモデル毎の違いを理解しておくのは非常に重要で、同じ動画配信サービスでもビジネスモデルによって適切なWEB戦略が変わるからです。
WEB業界でもWEB戦略を考える人でなければ、なかなかこのビジネスモデルの違いを理解してる人が少ないので、WEB業界ではないのに瞬時にビジネスモデルを理解したキングコング西野亮廣さんはさすがだと思いました。
>いわゆる「広告収入モデルからダイレクト課金モデルへの移行」…というか「ダイレクト課金の選択肢も用意する」といったところですね。
WEB業界でもこの視点を持ってる人は少ないと思う。
続く…西野亮廣『ダウンタウン松本人志さんの復帰について』
⇒ https://t.co/iatAJUlV5y— ハルリ@ホームページ制作/WEBマーケティング/SEO (@haluri_info) December 29, 2024
ダウンタウンチャンネル(仮)の月額料金と登録者数の予想
メディアの月額料金の予想
いくつかのメディアで、ダウンタウンチャンネル(仮)の月額料金と登録者数の予想の記事が投稿されていて、日刊ゲンダイデジタルでは「月額1,000円、登録者数100万人」、gooでは「月額1,000円、登録者数は少なくとも50万人」と予想していました。
日刊ゲンダイデジタル
松本人志が語った有料プラットフォームを見たい人は何人いるか?
本人としては100万人から月々1000円くらい取れると考えているのではないか。
goo
仮に月額1000円としても少なくとも50万人は加入するでしょう。
他のサブスクリプションの動画配信サービスの料金
動画配信サービスのビジネスモデルの違いを踏まえて、サブスクリプションのNetflixとABEMAの料金は次の通りになっています。
Netflix
広告付きスタンダード | 890円 |
---|---|
スタンダード | 1,590円 |
プレミアム | 2,290円 |
ABEMA
広告つきABEMAプレミアム | 580円 |
---|---|
ABEMAプレミアム | 960円 |
※Netflix・ABEMA共に広告付きのプランがあり、広告付きだと広告収入とサブスクリプションの両方になるので、純粋なサブスクリプションではありませんが、後述する将来の展望についての考察に関連してくるため、記載しています。
他のサブスクリプションの動画配信サービスの有料会員登録者数
Netflixの日本国内の会員数は1,000万人を超えていて、
Netflix「日本会員1000万」突破で、あらためて注目される「Netflixエフェクト」の影響力
Netflixが永らく開示していなかった日本国内の会員数を公表し、2024年の上半期時点で1000万を突破していたことを発表しました。
ABEMAは、プレミアム会員数が公式に発表されたのは2020年12月が最後のようですが、ABEMAを運営しているサイバーエージェントの決算説明資料で「12月末の有料会員数 92.1万人」と発表されています。
CyberAgent「1Q FY2021 Presentatiom Material~October to December 2020」
[ABEMA] 12月末の有料会員数 92.1万人、引き続きプレミアム会員限定作品を拡充
ダウンタウンチャンネル(仮)の月額料金と登録者数の予想
NetflixやABEMAは動画のジャンルも数も豊富なのに対し、ダウンタウンチャンネル(仮)はジャンルがバラエティのみで最初は数も少ない。
ですが、「ダウンタウン」と「松本人志」というこれ以上ないくらいの魅力(ブランド)があるので、料金は月額500~1,000円くらいになるのではないかと思われます。
また、登録者数も「ダウンタウン」というブランドがあり、活動を自粛していた松本人志さんの復帰を待ちわびてるファンも多いと思いますので、ダウンタウンチャンネル(仮)開始時にマーケティングのイノベーター理論のイノベーターとアーリーアダプターを取り込むことができて、その後も話題性が高いので新しい動画が配信される度にネットニュースになって多くの人が興味を持つと考えられますので、はじめはそこまでの登録者数を獲得できなくても、いずれ少なくても50万人くらいの登録者数にはなるのではないかと思います。
登録者数が50万人だとして、月額500円だと月2.5億円、月額1,000円だと月5億円の売上になります(実際はクレジット決済手数料が引かれますので、これよりも若干少なくなります)
週に何本の番組を作ることができるのか?
月の売上の予想ができたところで、次に週に何本の番組を作ることができるのか?について考察していきます。
そこで、番組1本あたりの制作コストと番組のクオリティ(おもしろさ)が重要になってくるのですが、当然番組1本あたりの制作コストが安ければ番組を多く作ることができますが、制作コストが安ければ番組のクオリティを上げにくくなるというトレードオフの関係になります。
また、番組のクオリティと週に何本の番組を作ることができるかは、登録者数にも影響してくるので、戦略上ここも重要なポイントになってきます。
テレビ番組の制作費用を調べてみると、深夜番組など制作費用が安い番組でも1本あたり数百万円、ゴールデンタイムの番組だと1本あたり数億円掛かっているそうです。
システムの保守・サーバー代などの固定費が月5,000万円掛かったとしても、番組制作に少なくても月2億円使うことができ、ゴールデンタイムの番組のような豪華なものにせず、番組1本あたりの制作費用が1,000万円なら月20本(週4回)、番組1本あたりの制作費用が2,000万円なら月10本(週2回)くらいには少なくてもなるかと思われます。
ダウンタウンチャンネル(仮)開始後のマーケティング戦略
先述した通り、ダウンタウンチャンネル(仮)開始後は、しばらくはネットニュースで取り上げられ、それが宣伝になるので、それだけでも大きな宣伝効果がありますが、より宣伝効果を高めるのと「どれくらいのサービスかある程度わかってから入会したい」と考える層もいるので、NetflixやABEMAのように無料で見られるYouTubeなどで予告動画を配信するというのも大きな手だと思います。
さらにスタートダッシュを速くするなら、様々なネット媒体で有料広告を出すというのも一つの手段です。
いずれにしても、ダウンタウンチャンネル(仮)開始後、新鮮で話題性が高いので、しばらくはネットニュースに取り上げられて宣伝をしてもらえますが、だんだん新鮮さがなくなってくるとネットニュースに取り上げられにくくなるので、YouTubeなどで無料の予告動画を出して宣伝したり、様々なネット媒体で有料広告を出すということが必要になってくるかと思われます。
なぜ松本人志さんは独自のプラットフォームを作ろうと考えたのか?ダウンタウンチャンネル(仮)の将来の展望
最後になぜ松本人志さんが独自のプラットフォームを作ろうと考えたのか?についての考察です。
先述したように、新しくプラットフォームを構築するのには、多大な労力が掛かりますし、立ち上げるためにコストも掛かりますので、既存のプラットフォームを利用した方が労力的にもコスト的にも楽です。
それでも新しく独自のプラットフォームを作ろうと思ったのは、「誰にも縛られず自由」であることと「誰にも縛られず自由な場所を他の芸能人(後輩芸人)にも作ってあげたい」という思いがあるからだと思います。
それが表れているのが、冒頭にご紹介した独占インタビューのこの部分です。
好きなもん同士が集まって、好きなことをやる。そんな場になるだろうと考えています。
番組を配信する際に、無料で見ることができて視聴者に負担がないので、多くの人に見てもらえるYouTubeは、ビジネスモデルが広告収入なので、プラットフォームを提供しているGoogleは広告を出す企業に配慮しなくてはいけないので、コンプライアンスを厳しくしなければならず、「コンプライアンスに十分配慮した優等生な番組でなければいけない」という制約が出てきます。
そのため、YouTubeは炎上系などのように、モラルがないチャンネルを凍結するという厳しい対応をしています。
テレビのビジネスモデルも広告収入で、長年第一線でテレビに関わってきて、広告を出す企業に配慮してコンプライアンスが厳しくなってきているのを目の当たりにして、広告収入のビジネスモデルだと「好きなことをやる」ということができなくなると感じたのだと思います。
既存のサブスクリプションのビジネスモデルのプラットフォームだと、アマゾンプライムは松本人志さんが番組を制作したので、番組を作りやすいですし、アマゾンプライム以外にもNetflix、ABEMAなどがあります。
それでも、既存のサブスクリプションのビジネスモデルのプラットフォームを選ばなかったのは、プラットフォームを提供している会社にコントロール権があるので、どのような理由で規制されるかコントロールすることができず、本当の意味で「好きなことをやる」ができなくなるからではないでしょうか。
また、「好きなもん同士が集まって」というのは、後輩芸人にも同じように「好きなことをやる」場を作ってあげるためなのだと思います。
ダウンタウンチャンネル(仮)の将来の展望
登録者数が50万人だとすると、広告を出したいという企業が出てくるかと思われます。
動画配信サービスのビジネスモデルで説明した通り、企業の広告を出すようになると広告収入も入るようになるため、番組1本あたりの制作費用を上げることができたり、週に出す番組の数を多くしたり、月額料金を安くすることができるようになります。
このように、広告収入を取り入れるメリットは大きいですが、「広告を出す企業に配慮しなくてはいけなくなる」というデメリットも出てきます。
広告収入に依存してしまうと、パワーバランスとして広告を出す企業に配慮しなくてはいけなくなりますので、この辺りはバランスで「好きなことをやってますが、それでも広告を出したい企業様はどうぞ」というスタンスでいられれば、誰にも制約を受けず、好きなことをやり続けることができて、より良い環境になっていくかと思います。
結論、ダウンタウンチャンネル(仮)は少なくてもある程度うまくいく可能性が高い
少し話しが脱線しますが、私が営業職をしていた時にたくさんのことを学びましたが、その一つが目標設定のやり方です。
通常の目標は現実的な理想を元に目標設定をしますが、理想を高くすればするほど目標が高くなり、どんどん実現する可能性が低くなるので、目標設定自体無意味になってしまうことがあります。
そのような目標設定方法の一方で、「最低限これくらいはやる」という目標設定を教わりました(マックスミニ戦略の考え方でしょうか?)
こちらの方がより現実的で、最低限そこまではできる可能性が高くなるので、その目標を実現した時に失敗にならないのなら失敗する可能性が低くなります。
ビジネスを始める前から十分なデータが揃っていて、確度の高い予測をすることは困難ですが、高い目標設定も大事ですが、目標を高くして実現する可能性が低くなってしまっては本末転倒になってしまいますので、より現実的なマックスミニ戦略の考えの分析も、戦略を考える上でとても重要だと考えています。
今回は、「月額5,000円で1,000万人登録したら月500億円だ」といった目標を高く設定する考え方の考察ではなく、より現実的な考察にするために「最低限これくらいはできるだろう」というマックスミニ戦略の視点で考察をしました。
その観点から考えて、ダウンタウンチャンネル(仮)の登録者数は50万人を想定しましたが、昔なら「テレビは無料で見られるのに、番組を見るのにお金が掛かる」というのは受け入れられにくかったですが、Netflixの日本国内でお金を払って登録してる人の数が1,000万人を超えたのを見ても、「番組を見るのにお金を払う」ということに抵抗感がなくなってきていますし、少なく見積もった50万人でもある程度はうまくいくので失敗になる可能性は低く、それどころかサービスの運営のやり方によっては登録者数が50万人どころかそれ以上の登録者数になりますので、想像以上に大きくなる可能性もあるのではないかと予想しています。
最終更新日
ハルリ
WEBマーケティング・SEO対策が得意な札幌のフリーランスのWEBデザイナー。お客様のお悩みを解決するコンサルティング型ホームページ制作を行っています。
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